足踏みラバーズ
今はそれくらい、ふわふわした記憶へと変わってしまっていた。
ちょっとのボタンのかけ間違いが、長い期間を経て、いつの間にか、大きなものへと変化してしまったのだろう。
そんな唯一の彼氏との記憶も朧ろげになってしまったけれど、別れの言葉だけはしっかりと覚えている。
恋人って楽しいもんかと思ってた。
お前といても辛いよ、なんで、俺ばっかり。
つき合ったのは間違いだった。
——俺が一番じゃないなら、もういらない。
「だからさぁ〜、新しい出会いだよぉ〜! で・あ・い!」
数時間に及ぶ私の不器用な恋愛話を議題とした激論は、お酒をがぶがぶ流し込みながら行われていたため、見事なまでにできあがっていた。
私を除く、3人が。
「そうだそうだー! 相手がいなきゃ始まらん」
「そうらよ〜。飲み会くらい行けばいいんら〜。変わろうとしなけら、今のままらよ〜」
良いことを言っているはずなのに、べろべろで呂律が回っていないせいで台無しにしている。
けれど、何か前に踏み出せそうな気がして、少し意欲が湧いてきたのは友人が何度も背中を押してくれたからだというのは間違いない。