足踏みラバーズ



 ケタケタと笑いあって、充実したランチタイムを過ごした。



小一時間の昼休みだけでは全然話し足りなくて、その後、何度か一緒に飲みに行くこともあった。

快活で利発的な性格と、ラフな格好の自分とはまるで違う、ノーカラーのジャケットと高めのピンヒールがよく似合っていて、年上かと思っていたけれど、同い年だということが発覚して、名前で呼び合う仲になった。







 いつものように飲みに誘われ、仕事帰りにエントランスで待ち合わせる。すると、申し訳なさそうにこちらに駆けてくる恵美が見えた。




「ごめん! 今日さ、私の友達も一緒でいい?」



 男の子なんだけど、と付け加えられた。それは突然の申し出で、以前の自分だったら、きっと断っていたと思う。





「そうらよ〜。飲み会くらい行けばいいんら〜。変わろうとしなけら、今のままらよ〜」

という、あの日の冬子の言葉を思い出して、少し、前向きになれた。べろんべろんに酔っぱらった情けない姿も一緒に思い出して、可笑しくなったけれど。






 いいよ、と返事をすると、恵美は嬉しそうに顔を綻ばせた。



「ありがと〜。実はさっきいきなり言われたから、どうしようかと思ったんだけど」

「ううん。恵美の友達の話、よく聞いてたから実際会ってみたかったし、ちょうど良かったよ」

「ありがとー、百合子〜」

「ううん、全然いいよ!」



 少しばかり、緊張の面持ちで、居酒屋へと向かった。








「恵美! こっちこっち!」



 ここ、ここ、と言わんばかりに、大きく手を振るのが見えた。



「あれ。あんた一人じゃなかったの?」

「大学の友達連れてきた。お前が友達と一緒だって言うから」

「だったら先に言いなさいよ!」



 ごめんごめん、と小さく片手をあげ、頭を低くするベリーショートの男性。



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