足踏みラバーズ
酔っ払った二人を、瑞樹の部屋へ押し込む。
床に雑魚寝させて、スーツのジャケットだけハンガーにかけた。勝手知ったる部屋の毛布を寝そべる二人にかけた頃には、既に寝息を立てていた。
おもむろに冷蔵庫を開けてしまったが最後、ミネラルウォーター一本すらないことに気づいて、コンビニまで足をのばした。
余計なお世話だろうなと思いながらも、「お酒を飲んだ翌日には味噌汁が飲みたい」なんていう瑞樹の言葉が染みついていて。
この何年か、忘れたふりをして、自分の気持ちを騙し騙しに生活していたのかと思うと、情けなくなる。
過去にとらわれて自分のことも省みず、前に進んだ気持ちになっているなんてバカみたいだ。
「いらない」なんて言葉を言わせたのは、きっと私のはずなのに。薄暗い道はまだ街灯がついていて、明けきっていない空が自分の心を表しているようだ。
肩を落として歩いていると、通いなれたはずのコンビニが営業していなかった。あれ、おかしいな、と疑問に思うも、もう少し歩いて行ったところに24時間営業しているスーパーがある。
目的地を急遽変更して、スーパーへ向かった。
買い出しを終え部屋に戻ると爆睡している様子に安心して、台所を借りてしじみの味噌汁と軽い食事なんかも作って。インスタントで済まさなかったのは、一人分しか売り場になかったからだ、と言い訳をしながら。
しばらくして、勝手に部屋に入ったことと、台所を借りた旨を書置きに記して部屋を後にした。もちろん、鍵はポストに入れて。
外は既に、明るさを取り戻していた。もう始発が出る時間だったけれど、少し歩きたい気分だったから、朝の陽ざしを浴びて1時間ほどの道のりを歩いて帰った。