足踏みラバーズ
「あたしさあ、瑞樹の束縛にストレス感じて吸い始めたんだと思ってたのよ。でも蓋を開けてみたら、違ったじゃん? 今も吸ってんだし」
「う、うん……」
「思ったんだけど、なんか、こう、なんていうの?」
「ん?」
「もっと誰かに寄りかかれば。1人で何とかしようとしないでさ。愚痴くらいだったら、あたしだって聞けるよ」
「そんなつもりはない、つもりだけど……」
「ふっ、何それ」
「うーん……」
「瑞樹さ、口悪いじゃん。大事なことなんも言わないし」
「……ん」
「つき合ってるのに一方通行な感じに思ってたんじゃないの。結局それも言わないで」
「……うん」
「そんで時間だけ経ってさ。ふふ、あんたら2人は面倒だねー。一緒にいるのにすれ違い? 的な? ドラマみたいね」
「……ドラマチックなのは、求めてないよ」
げんなりと肩を落として換気扇を止める。
とことこリビングに戻ると、別に説教したいわけじゃなくて、とブランケットを差し出し苦笑していた。
「百合子、それは驕りがあるわ」
ブランケットに包まって、冬子の言葉に耳を傾けた。
「ドラマチックな女の主人公は大抵上手く立ち回ってるものだよ。この前、月9でさ、別れてしばらくしてから元カレの子の妊娠発覚とかいうメロドラマやってたでしょ」
「ああ、あれ」
「よく考えたら別れる直前にヤんないでしょ。ま、急に険悪になることもあるけどさ。みんなそこそこ上手くやってるのよ。時と場合によって、頼る人変えてるだけ」
だからって限度があるけどね、と前髪を撫でていた。
「あんたには難しいかもしれないけど」
もうちょっと軽く考えてもいいのかもよ、百合子ちょっと潔癖なんだよと私の頬を抓った。
たっぷりと談義すること数時間。
既にカーテンの隙間から明るい日差しが漏れていて、テレビの向こうで女子アナが笑っていた。次第に瞼が重くなり、うとうとし始める。
あたし昼から仕事だから、という声が微かに聞こえて眠りに落ちた。
起きな、と体を揺さぶられる。眠い目を擦って、だるい体を持ち上げる。
「……うぅん、今何時……」
「11時」
30分後には家出るよ、既にメイクをして小奇麗なおでかけ用の冬子ができあがっていた。
「それとも、もうちょっとうちいる?」
「んー…一緒に出る」