足踏みラバーズ
ドラッグストアによって日用品を買い足してから、スーパーへ向かった。
1週間分の食料をまとめて買って、おまけに今日はペットボトルの飲料水が特売で買わずにはいられず、牛乳と低脂肪乳も買ったのにペットボトルまで持ち物に加えられ、相当な重さになってしまった。
一度家に戻ったほうが良かったかも、とほんのちょっと後悔したけど、ずっしりとした重量感に購買欲が満たされて、来た道を歩いて帰る。
帰り道、黙って重い荷物を私の手から奪いとって颯爽と前を歩いて帰った。
帰ると言っても、行き先は私の家だったけれど。
近所で1、2時間ほどの買い物をすませ、さて晩御飯でもつくるかとキッチンに立つまで、瑞樹がいることに違和感を感じるのを忘れていて。当たり前のように二人分のご飯を作ろうとしていたところでようやくハッとした。
「瑞樹、もう夕方だから」
「ん」
「うんじゃないよ、ほら帰る!」
ほらほら、とスーツをプラプラと目の前に見せても帰る様子は見せなかった。
「今日、泊まってく」
もう決めたから、と頑として意見を変えてくれそうにもない。
「いやいや、どうしてそうなったの。そしたら、あたしまた誰かの家に行かなきゃいけないじゃん」
「ここに居ればいいじゃん。お前んちだろ」
私がおかしいのかと錯覚するくらいの堂々とした物言い。あんたのせいで夜中に家を出たんですけど、とぎろりと視線を向けた。
「……昨日みたいなことはしない」
信用ならない、と罵倒しようとしたけれど、悲しげな横顔が見えて口をつぐんだ。
晩御飯。
二人分の食事が食卓に並ぶのは、久しぶりの事だった。炊き立ての白いご飯と、湯気のたつ味噌汁に食欲がそそられる。
今日はまだ何も食べていなかったから、お腹がペコペコだ。ぐぅ、と小さい音をかき消すように、お茶碗を手に取った。