足踏みラバーズ
小さな頃から一緒に過ごしてきた友達3人。
身長が小さくて、一見女の子らしい容姿とは逆にはっきりとしたもの言いの奏恵、モデルのような朱莉、仲間内では一番大人びた性格の冬子は、高校までずっと同じ環境で過ごしてきて、共通の思い出も、共通の友人も、たくさんのことを共有している。
だからこそ、心配してくれているのもわかる。鬱陶しいと思ったことはたったの一度もない。けれど、何度もこの話題になっては逸らし、話題になっては逸らし、を繰り返してきた。
話をするのが辛いのではない。
自分の中で答えが出せなくて、宙ぶらりんのままなのをそのたびに突き付けられるからだ。
忘れもしない、高校2年生。下咲瑞樹と付き合い始めたのはこの年だった。
本当は普通校の女子高に行きたくて、高校受験の何年も前から進路先を決めていたけれど、少子化の波には逆らえず、近くの学校と合併、し共学になっていた。
女子校でないのなら、この学校にこだわることはないかなと感じ、当時の担任の先生が薦めてくれたこともあり、共学の進学校へと進学した。
思えば、このとき進学校へと進路を変更していなければ瑞樹とは出会っていなかっただろう。
高校へ進学すると、中学までの環境とは一変し、おねしょをしていた頃から付き合いのある友達はクラスに数人しかいなくなり、仲の良かった女友達は皆違うクラスになってしまった。
始めは心細くて不安でいっぱいだったけれど、案の定、人見知りではなかったので、思いのほかすぐ友達ができた。
高校になると、それまでなかった、やれつき合うだの、やれファーストキスや初体験だのと、いわゆる恋バナというものが多くなっていった。
彼氏が欲しいなんて、好きな人さえいなかった私には、興味すら持てなかった。
そんなとき、彼、下咲瑞樹がたくさんのものを私にくれたと、今でもとても感謝している。
「佐伯」と「下咲」で出席番号が近かった、入学当初の高校一年生。前後の席になり、おのずと会話する頻度も増え、自然と仲も良くなった。