足踏みラバーズ



 それと、隠し事が下手なこと。



レンタル店でDVDを借りた時、大人のDVDが何枚かあった。



DVDの擦れて読めないデザインの版面だけでは気づかなくて、再生したら、裸の女性が出てきてびっくりしたけど、男の子だし、そんなものだろう、と思って気に留めることもなかった。



他のDVDと並べて置いておいたら、順番が違ったのか、焦った様子で「見た?」と顔を真っ赤にして訪ねてきた。

うん、と笑って答えたら、別に、他の女に興味があるわけじゃない、と大きな声で訴えられた。



続けて、ごにょごにょと「生理現象だから……」とか「抜かないと、その、朝とか……」と言い訳されたけど、ゴミ箱にくしゃくしゃの丸まったティッシュが捨ててあるのを見たことがあるし、と意地悪を言ったことがある。



そしたら私の目の前で、「いつ、その、えっと、百合子ちゃんとできるかわからないし……」ずっとは溜めこめない、と言われて固まったことがある。

一緒のベッドで寝てたらムラムラするもん、と率直過ぎる言葉を聞いて、しばしフリーズしていた。





そのあとは、ひいた? と何度も尋ねられて、「蒼佑くんも普通に性欲あるんだね」と返したら、前に言ったじゃん、性欲あるって、と覆いかぶさってきていた。



初めて体を重ねたのは、つき合って4カ月ほど経った日のことだった。




しっかりとゴムを用意していて、用意周到さに、ちゃっかりしてるな、と可愛く思えた。



その上、挿れただけで達したのには驚いた。

それに、ムードもに後押しされたのもあって、自分から蒼佑くんに、キスをした。目を見開いて唇をこじ開けられて、生々しい糸が引いたあとに苦しいくらいに抱きしめられた。





「百合子ちゃんからキスしてくれたの、初めてだ……」



 汗ばんだ蒼佑くんの身体が私の身体にぽたぽたと滴を落として、目元を指で拭ったら、好きだ、と愛おしそうに頬を撫でられた。






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