足踏みラバーズ
重い。重すぎる。
まとまりのない内容だったし、正直、起承転結にかけると思ったけど、実話を物語として読めるように、フィクションにしないように描写したらこんな風になるのかもしれない。
終わり方が読者に投げかける方式だったのも頷ける。
これは是非、私たち三人で収めるのではなくて、部署のみんなにまわして討論しよう。
うちの漫画雑誌には合わないと思うけれど、ウェブで展開している漫画雑誌のほうには、こんな突出した内容のものをぶち込めるかもしれない。
恋愛ものも、結構あるし。
そう思って、鞄にしまおうとした。
「百合子ちゃん、お風呂あいたよ」
せっけんの匂いをさせて、冷蔵庫から酎ハイを取り出す。ソファーに腰かけると、それ何? と持っていた漫画に興味を示した。
「蒼佑くんは読まないほうがいいよ。せっかくさっぱりした後なんだし」
胸糞悪くなるよ、と酎ハイを一口もらうと、いや、読む! と私の手から奪いとっていった。
蒼佑くんは本を読むのが遅くて、私の2倍くらいはかかる。
20分くらいかかったから、と時計を見て「お風呂いってくる」と声をかけたら、うーん、と生返事が返ってきた。
お風呂からあがって部屋に戻ったのは、ちょうど蒼佑くんが漫画を読み終えるのと同時だった。
パタンと漫画を閉じて、テーブルの上に置いた蒼佑くんは、あんぐりと口を開けていた。
隣に座って、ソファーの上で体育座りをする。
「どうでしたか、純愛という名の不倫は」
ずいぶん、性に溺れてるよね、と笑う。
「ちょっとおれには早すぎた……」
と、うなだれていた。
そもそもなんでこんな本買ってきたの、と聞かれて、買ったんじゃないよ、借りたんだよ、と言いながら、鞄にしまった。
「誰から借りたの?」
「中島くん……、あれ、相田さんのかな? どっちか」
深く座り直しながら話すと、中島くんはやめて、としきりに訴えかけてきた。
「ああ、不倫? てか、えっち、か」
「……うん」
「ふっ、ありえないでしょ」
あしらうつもりで軽く受け流すと、興奮冷めやらぬ、といったふうに、
「男女の間でありえない、は、ないんだよ!」