足踏みラバーズ
そう言いながらガクガクと身体を揺さぶられた。
はいはい、とつれない返事に不服だったのか、むにむにと胸をまさぐってきて、
「ほら、こういうこともあり得る」
と至極真面目に言ってくるものだから、
「そりゃあ、あたしたちの間にはあってしかるべきなんじゃないですか、つき合ってるんだし……」と言い終える前に、
にんまりした顔が見えて、今日はやらないよ、とそっぽを向いた。
「相田さーん、中島くーん」
パソコンに向かう二人に、いい? と声をかける。
二人ともすぐに察してくれて、「どうでした!?」「どうでしたぁ!?」と声をハモらせた。
「いや、これちょっと問題作。……ていうか革命児?」
ポッキーを口でぶらぶら加えていると、ありですかなしですか、と問われた。
不倫はないね、とがりっと一口ポッキーを噛む。やっぱり! と今にも万歳しそうな中島くんとは対照に、シュンとうなだれる相田さん。
でも、と一言付け加えた。
「これ、誰も不幸じゃないもんね」
え、と二人同時にこちらを見る。
目を見張る二人の言いたいことが手に取るようにわかって、にやにやしてしまった。
なになに、おしくらまんじゅうみたいに挟まれて、パーソナルスペースが狭すぎます、と逃げてみせた。
中島くんはそもそも不倫がよくないと思っていて、嫌悪感を示している。
性に溺れなくとも、ピュアな愛情というのを信じている。それに自身がないのは、素人童貞、だからであって。それに関しては自分も同意見だな、と思う。
それに反して相田さんは、一途な愛だと思っている。
きっかけがなんであれ、一人の人を思うというのは尊いことだと思っている。
ちなみに、相田さんの好きな登場人物は、B子さん。
中島くんは不倫関係になった時点で不幸だと考えているし、相田さんは、結果的にはB子は太郎の特別な女性になったのだから、幸せだと思っているようだったけれど、
皆が皆、何か十字架を背負っていて、誰も幸せになんてなれていない。