溺愛ENMA様
私はスクバを背負ってから閻魔を見上げた。

「私、今日は遅いから。はい、鍵。ご近所の目があるんだから、壁通り越して中入ったり、玄関先で消えたりっていう、イリュージョン禁止だからね。ちゃんと鍵開けて入りなさいよ」

「なんで遅いんだ」

「亜子達とカラオケ」

「カラオケって?」

「そんなの説明してる時間ないわ。じゃね」

その時、教室の入り口で、隣のクラスの架純ちゃんが私達を呼んだ。

「亜子、ルナ、舞花。十分後に正面玄関に集合だからね」

「はーい!」

私は架純ちゃんに返事をした後、閻魔に向き直るとこう言って手を振った。

「鍵なくさないでよ。じゃあね」

閻魔の返事を聞かないまま、私は亜子ちゃんと足早に教室を後にした。

この時の私は、まるで気づいていなかったんだ。

この後に待っている、恐ろしい運命に……。
< 138 / 328 >

この作品をシェア

pagetop