溺愛ENMA様
「やっぱ、細くて美人で女らしいところ?」

閻魔の返事が返ってこない。

「……閻魔?」

玉葱を炒めていた手を止めてキッチンからリビングを見ると、閻魔の横顔が見えた。

のめり込むように前を見据えている閻魔は、返事をしない。

「閻魔ってば」

二度目の呼び掛けで、閻魔は少し視線を上げた。

それから小さく息を吐くと、素っ気なく答えた。

「さあな」

さあなって。

全然参考にならないじゃん。

「会いたいでしょ?たまには帰ったら?」

私の問いに、閻魔は低い声で答えた。

「しょっちゅう帰ってる。お前が寝てる間にな」

「そっか。じゃあ、蘭さんとは仲良くやってるんだね、良かった。だって私のせいで閻魔が恋人に会えないなんて申し訳なくて」

そっか、閻魔にしたら死後の世界なんて一瞬で行けるんだね、きっと。

私は少し安心すると、夕食作りに専念した。
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