溺愛ENMA様
「なんだ、お前のその身なりは」

完っ全に私に対する言葉だわ。

だって、見かける人は皆、白い着物……いわゆる死に装束なのに対して、私はカットソー&ショートパンツなんだもの。

……振り返るべきか、そのまま逃げるべきか。

「おい、お前!俺様の声が聞こえねぇのか!?」

お、俺様!!

今時、自分を俺様なんていう人、いる?!

ジャイアンか!

けど、ジャイアンの訃報なんてニュースは知らないし、声が違う。

きゃー、ピンチだわ、マジでどうしよう。

このまま走って逃げて、逃れられる自信はまるでない。

かの有名な『口裂け女』が百メートル三秒で走るって聞いたことあるし、この声の主が人間じゃない場合、口避け女より俊足の可能性だってあるわけで。
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