溺愛ENMA様
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「なあ、ルナ。ホントに行くのかよ」

夢の中で夢魔(むま)が私に語りかけた。

夢魔っていうのは人の夢を操る一種の悪魔。

全然悪魔っぽくないけど。

そんな夢魔である彼の名前は仁(じん)。

「行くわよっ!だから手助けしてよね」

「……まいったなぁ……けどまったくもって、お前は風変わりな人間だよな」

仁は私をシゲシゲと見つめると、盛大な溜め息をついて立ち上がった。

「それ、もっと早く教えて欲しかったよ」

「それ?」

仁は赤髪をバサバサとかき上げると、端正な顔を私に向けて眉を寄せた。

「そ!普通の人間には夢魔が見えないって事実」




『俺は夢魔で、名前は仁(じん)ってんだ。よろしくな』





私はある日、夢の中でこう言って笑った仁との出逢いを思い返して苦笑した。

幼い頃から仁と友達の私は、自分が人には見えない存在を見ている事にまるで気付いていなかった。

だから、小学生の頃の友達がこぞって『コックリさん』をしたり、パパの赴任先のアメリカの小学校に転校した時、女の子達が『ウィジャボード』をして霊を呼び出しているのを見た時も、少しだけ不思議だったんだよね。
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