溺愛ENMA様
ロイは……ロイは恐らく、目を覚ましても私を覚えてはいないだろう。

ロイが何年前から身体を乗っ取られていたのかは定かでないが、私と出会った時はもうすでに、彼はアスモデウスだったのだ。

目を覚ましても、ロイは私を知らない。

閻魔はショックを受けるであろう私を予測し、先に帰れと言っているのだ。

涙が溢れるのを止めることができない。

あのハロウィンの小さな恋は偽物だった。



『ルナ、好きだよ』

『私も』

『いつか大人になったら僕の花嫁になって、ルナ』

『うん、ロイ』


再会してから告白されたあのキスも。


『ルナ、好きだよ。僕の恋人になって』

『うん。私もロイが好き』


この恋は恋じゃなかったんだ。
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