溺愛ENMA様
……いくら男前でも、誰だか分からない相手に付いていくのは怖いもの。

自分の力で朱里を探すしかない。

私はしばらくの間、均整のとれた彼の後ろ姿を眺めていたけれど、やがて意を決して踵を返した。

※※※※※

ようやく川に架かる橋に辿り着いた私は、ギョッとして立ち止まった。

……橋の手前に鬼がいる。

まさに節分の日付近に、スーパーで売ってるお面みたいな鬼だった。

その鬼が橋に近づく一人一人に指をさして指示を出していて、私はもう、イヤな予感しかしなかった。

ダメ。

絶対にダメだわ。

この狂暴そうな鬼が、おとなしく私に橋を渡らせてくれるとは思えない。
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