溺愛ENMA様
がっかりしながら再びコインをポケットにしまおうとした私に、お爺さんが食いついてきた。

「そりゃ、お前の国の銭かい?」

……ちょっと違うけど……でもまあいいや。

「まあ、ある意味そう。特殊なヤツなの」

良心が痛むけど、あながち嘘じゃない。

「じゃあ、それで手を打ってやろう」

「まじ!?」

「まじって?」

マジの意味がわかってないお爺ちゃんを、若干面倒臭く思い、私はアッサリそれをスルーすると、交渉へと持ち込んだ。

「このお金あげるから、舟に乗せてくれない?ううん、私が漕ぐし」

実はね、私、船を漕いだことがあるんだよね。
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