溺愛ENMA様
「知ってる」

「……なんであんなこと言ったのよ。桜ちゃん送ってあげたら良かったじゃん」

閻魔は私の首に回したままの腕を解くと、ムッとしたように瞳を光らせた。

「本心かよ」

「っ……!」

一歩、また一歩と閻魔が私に近付き、私はそんな閻魔になにも言えずに後ろに下がって距離をとった。

日はすっかり暮れて、外灯と行き交う車のヘッドライトが忙しなく私たちを照らした。

「閻魔」

「本心かって訊いてんだよ」

街の喧騒に染まらないハッキリとした声でそう言うと、更に閻魔がもう一歩私に近づく。

背の高い閻魔を見上げながらコクンと息を飲んだとき、駐車場のブロック塀の冷たさを背中に感じた。
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