溺愛ENMA様
「ありゃあ、外道衆じゃ。こっちに来る」

嘘でしょ、勘弁して!

「行くわよ、お爺ちゃん!」

「待ってくれ……うひゃあ!あれーっ!」

待てないわよっ!おとなしく乗ってて!

私はお爺ちゃんにコインを握らせ、彼の着物をひっ掴むと船にドスッと突き落とし、自分もそこに飛び乗って縄を外すと、必死で櫓を漕ぎ始めた。

「なんだ、あの娘は。生き人じゃねえのか?」

「おい、船頭のジジイ!待て」

外道衆達のだみ声を後に、死に物狂いで私は船を漕ぐと、一目散に向こう岸へと向かった。
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