溺愛ENMA様
※※※※※※

「おお、お前は確か…………」

肩で息を繰り返す私を細い眼でジーッと見つめると、六文船のお爺ちゃんはそこで言葉を止めた。

「確か……」

思い出してくれたのを期待して待つ私に、お爺ちゃんはニンマリと笑った。

「確か五百年前、夏祭りでナンパしてイイ仲になったお花ちゃんじゃな」

違うわっ!

私は内心舌打ちしつつ、ポケットの中に手を突っ込んだ。

「お爺ちゃん、私をこの船にのせて!私が漕ぐから!」

「おや、お前は確か……以前、珍しい銭をくれた娘じゃな」

記憶が戻ったらしいお爺ちゃんにブンブンと頷くと、私は無理矢理彼の手にお金をねじ込んだ。
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