溺愛ENMA様
「元気での」

「うん、ありがとうお爺ちゃん」

お爺ちゃんは船を降りた私を見上げて再びこう言った。

「珍しい銭の礼じゃ。眼を閉じなさい。連れていってやろう」

「え?」

「特別じゃぞ?川を渡る術は使えんがここからじゃと少し助けてやれる。ゆっくり十数えたら眼を開けなされ」

言われるがまま眼を閉じると、私はゆっくり十数えた。

その間、お爺ちゃんが何かブツブツと呟いていたけれど聞き取る事が出来なくて、そのうち十を数え終わった私は眼を開けた。

「えっ……」

そこは……大きな建物の前だった。

お爺ちゃん……私を運んでくれたんだ……。
< 269 / 328 >

この作品をシェア

pagetop