溺愛ENMA様
ありがとね、お爺ちゃん。

私は心の中でお爺ちゃんにお礼を言うと、その建物を見上げた。

それは荘厳な雰囲気の日本建築物で、その支えとなっている朱塗りの列柱は、とても太い。

開け放ってある両開きの扉をくぐり、中に入るとその建物の迫力に圧倒される。

金箔や漆をあしらった装飾品が、扉やはめ殺しの窓を彩っていて、実に絢爛豪華だ。

庭には色鮮やかな花が咲き乱れていて、辺りは薄暗いというのに鮮やかに眼に写る。

此処は……何だろう……神社?いや、神社にしては、やたらと華やかで……。

その時、どうしていいのかまるでわからず立ち尽くす私の耳に、悲鳴が聞こえた。

「お待ちください、閻魔大王っ!それだけはお許しください!」

……閻魔大王……。

全身がビクッと震えた。

……閻魔……閻魔がここに?!

私は声のした方へ早足で進んだ。
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