溺愛ENMA様
眼を凝らすと、人影が見える。

不思議なことに人影が進むにつれてその足元に蜂蜜のような甘い光が灯され、とても幻想的だった。

一歩また一歩とその人影大きくなり、次第に私の胸も高鳴る。

だって、閻魔だったんだもの。

ああ、やっと会えた、閻魔に。

スラリとしたその姿、端正な横顔。

閻魔、閻魔……!

閻魔は、私に気付く様子もなく、目の前を通りすぎようとしている。

今、声をかけなきゃ。

「閻魔……」

「帰れ」

心臓に冷水をかけられた気がした。
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