溺愛ENMA様
「大丈夫、着替え持参だし」

「さすが涼馬だわ」

「なあ、ルナ」

「ん?なに、涼馬」

涼馬は私を真っ直ぐに見ると、小さな声で言った。

「もしここにアイツがいたら……アイツはネクタイやボタンどころか、靴下までなくなってたかもな」

涼馬の顔は寂しげで、私はそれが不思議だった。

「……アイツって?」

「ルナ。俺さ、本当は覚えてたんだ」

「……え?」

意味がわからず怪訝な顔で涼馬の眼を見つめると、 彼は眩しそうに空を見上げた。

「アイツ……円真の事。ルナ、お前もだろ?」
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