溺愛ENMA様
駅への道を涼馬と一緒に並んで歩きながら、私は夜空を仰いだ。

「アイツらうるせーんだよ」

「涼馬、言葉が悪い。賑やかなだけ!」

私がそう言うと涼馬が笑った。

「なあ、ルナ」

「んー?」

片側四車線の道路が騒がしく、私の返事はかき消された。

けれど涼馬はそれに構わず言葉を続けた。

「あの日からもう三年が経つぞ」

私は星の見えない夜空を諦め、半歩先で立ち止まりこちらを見つめる涼馬を見上げた。

肌寒い風が、まるで心までもを撫でたように身が震えた。

「……うん……分かってる」
< 299 / 328 >

この作品をシェア

pagetop