溺愛ENMA様
たまに音楽番組をつけては、皆でカラオケに行くからって新しい歌を覚えていたっけ……。

狭いリビングにペタンと座り、小さなローテーブルに手を伸ばすと、私はリモコンの電源ボタンを押した。

すぐ暗闇に青い光が浮き上がり、聴き馴れたメロディが耳に届く。

《His voice 忘れない His voice 切なくて His voice あの日から His voice 愛してる》

閻魔の声は……。

そう、低くて、落ち着いていて。

『ルナ』って呼ぶ声が柔らかくて優しくて……。

声が聞きたい。

閻魔の声が、聞きたい。

「閻魔……」

ポトリポトリと落ちた涙がラグに吸い込まれて、まるで何も無いかのように沈んで消えた。
< 305 / 328 >

この作品をシェア

pagetop