溺愛ENMA様
「っ……!」

やけにリアルな声だった。

背中が無意識にビクンとして、思わず硬直する。

「ルナ」

嘘…よね…。

嘘だよね?!

背後から低くて艶やかな閻魔の声が聞こえて、私の心臓が痛いくらいに脈打ち始めた。

「なあ、こっち向けって」

……やだ、怖い。

だってこれが本当に幻聴で、振り向いたダイニングテーブルに誰もいなかったら、私はもっと泣いてしまうもの。

「ルナ、聞こえてんのか」

声と共にフワリと空気が動いた。
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