溺愛ENMA様
「あっ、そうだ!閻魔。涼馬がね、閻魔の事ちゃんと覚えてたんだよ」

私がそう言うと、閻魔は一瞬驚いたように眉を上げた。

「……そうか。あいつもお前と一緒なんだな」

そう言った後閻魔は、人が大切な思い出を語る時に見せる独特の光を瞳に宿して、再び口を開いた。

「昔……アイツと、会社を立ち上げようと約束したんだ。アイツ、親父の会社を継ぐのは兄弟に任せて、自分は一から起業したいって。……覚えてんのかな」

私は嬉しくなって声を抑えることが出来なかった。

「絶対覚えてるよ!涼馬きっと喜ぶよ!さっきまで一緒に飲んでたから多分まだ起きてるはず!今から電話して知らせ……んっ」

最後まで言えなかった。

だって閻魔が唇で私の口を塞いだから。
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