溺愛ENMA様
再び視界が滲んだけど、私は彼の顔を睨み据えた。

「私を何にも知らないバカだとでも思ってんでしょ?!確かに成績は良くない!けどね、あんたが閻魔大王じゃないことくらい、分かるよっ!
私はね、真剣なのよっ!!死後の世界なんて本当は来たくなかった!だけど、大切な朱里の為だもの!彼女をどうしても死なせたくない。なのに、あんたは私を死人じゃないと知ってて、切羽詰まってるって分かっててからかうんだね。ひどいよ!!」

閻魔と名乗った彼は、泣きながら捲し立てた私を黙って見下ろしていたけど、暫くの後、よく響く声で私に問い掛けた。

「……俺がお前をからかってるって?」

「からかってるじゃん!あんたが閻魔大王なわけないでしょ!!」

私は昔見た、閻魔大王座像を思い出しながら目の前の彼を見上げた。

あの時見た閻魔大王は、グッと寄った太い眉と、眼に写る全てのものを威圧する強い眼差しがとても印象的な、恐ろしい顔だった。
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