溺愛ENMA様
どう見てもこの人とは別人だ。

「クッ」

閻魔が笑った。

「なによっ」

閻魔と名乗るイケメンは、刀を肩に担ぎ、反対の手で私の腕を掴んだまま、その切れ長の眼を私に向けた。

「俺が偽者か本者か……その眼で確かめろ。来い」

「やだ、行かないよ」

「いいから来い」

言うや否やイケメンは、私の腰をさらうように抱き上げて、何やらブツブツと口の中で呟いた。

「きゃあっ」

呪文のような彼の言葉の後、強い風が巻き起こり、私はその激しさに驚いて、ギュッと固く眼を閉じた。
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