溺愛ENMA様
「おい、眼をあけろ」

彼の声に恐る恐る眼を開け、あたりをそっと窺うと、何やらそこはとても立派な建物の中だった。

私は自称・閻魔にしがみついたまま、その顔を見上げた。

中庭を囲うように造られた廊下の反対側には、立派な襖の部屋が何部屋も連なっている。

「ねえ、ここどこ?」

「俺の屋敷だ」

え!こんな高級旅館みたいな家に住んでんの?!

その時、私たちの立っている真横の部屋から人の気配がした。

襖が少しだけ開いたその部屋からは、蝋燭の灯りが漏れていて、そこから女の人の声がした。

「……あなた……。いつまでも蘭をお側においてください……」
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