溺愛ENMA様
「蘭、可愛いやつよ。お前は実にいい女だ。だがな、お前を可愛がるとセガレが……閻魔が拗ねる」

威厳のある野太い声のあと、蘭と呼ばれた女性が笑った。

「私からしますれば、ご子息はまだ子供。私はあなた様のような大人の男性が好きなのでございます」

あ、の。これって……。

というか、私ってばいつまでこの人にしがみ付いてんのっ!

「あの、ごめんっ」

私は逞しい彼の身体に密着しっぱなしだったのが恥ずかしくて、焦りながら身を起こして数歩下がった。

ところが、数歩のはずがグラッと大きくよろけてしまい、間の悪いことに背中が襖にガタンと当たってしまった。

や、ばい。
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