溺愛ENMA様
「これはこれは父上。
わざわざ俺の屋敷にまで出向いてくださるとは。いつから変成王(へんじょうおう)の狗(いぬ)になられたのですか。蘭とイチャついていた事よりも驚きです」

言い終える前から浮かべた不敵な笑みが、真っ直ぐに冠の男性に向けられていて、私はその険を含んだ眼差しに息を飲んだ。

な、なんか、不穏な空気が漂ってるんだけど……。

父上と呼ばれた男性は、彼の言葉に一瞬グッと眼を細めたが、すぐに何かを押し殺すようにフッと笑った。

「変成王の狗か。まあ、それもいいかも知れんな」

「父上、どうぞ俺の事はお構い無く。俺にはコイツがいますから」

わ、ちょっとっ!

焦る私に眼もくれず、彼は言うなり端正な顔を傾けて、私の頬にキスをした。
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