溺愛ENMA様
途端に父上が、私をマジマジと凝視しする。

「なぜ生き人がいる」

「話すと長いもので。失礼いたします、父上」

言うなりイケメンは踵を返して身を翻し、それと同時に私も彼に連れられて、その場を後にした。

「閻魔様……」

蘭という女性の声に足を止めようともせず、彼は歩を進め、やがて廊下を曲がった突き当たりにある階段を上り、二階の広い部屋へと入った。

「変なとこ見せて悪かったな」

閻魔が私を離し、ボソッと呟くように言った。

少し見えた横顔が何だか切な気で、私はそれが蘭さんと、彼の父親のせいだと悟った。

「彼女……」
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