溺愛ENMA様
「蘭は権力のある強い男が好きなんだ。それは最初から知ってる。だからアイツが父上を選んだって仕方ない」

「でも……」

でもさ、だからって少し、見境無さすぎない?!

父親に言い寄りつつ、息子にも思わせ振りな態度をとるってどうよ?

私がモヤモヤとそんな事を考えていると、彼が少し明るい声を出した。

「飲むか?」

私にそう声をかけた後、部屋の隅にある足の長い机に歩み寄った彼は、杯に液体をなみなみと注いだ。

きっとお酒だ。

私が首を振るのを見ると、彼はそれを一口で飲み干し、やがて徳利ごと煽った。

彼の喉がゴクゴクと上下し、暫くの間私はそれを見ていたんだけれど、途中で我に返った。
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