溺愛ENMA様
ダメよ、この人が酔っぱらう前に朱里の居場所を……。

「ちょっと、あなた本当に閻魔大王なの?」

彼はそう問いかけた私を斜めに見下ろして、フッと笑った。

「だからそうだって言ってるだろ」

「あのさ、どう見てもあなたのお父さんのが閻魔大王っぽかったけど!」

「昔な。今は俺が閻魔」

「えー……」

なによ、社長じゃあるまいし、跡継ぎとかそういうもんなの、閻魔って。

呆気に取られている私の前で、彼はグビグビと酒を煽り続けている。

「で、生き人がこんなとこまで人探しってか?」

ドカッと床に胡座を組んだ閻魔の前に、私もペタンと腰を下ろして彼を見つめた。
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