溺愛ENMA様
閻魔は私を一瞥すると、溜め息をついて左手に持っていた刀を半回転させた。

「さあな。迷宮にでもいるんじゃねぇの?どっちにしろ、死んだらまた来い。ちなみに、そのお前のイトコとやらは美人なのか?蘭より胸がデカけりゃ、」

パァン!と乾いた音が部屋中に響いた。

自分の掌の、痺れにも似た痛みと閻魔の不自然な横顔。

誰かをひっぱたいたのなんて初めてだ。

「人間じゃないあんたなんかに、人の気持ちなんて分かんないのかも知れないけど、ふざけないでよっ!私にしたら愛してる人なのっ……朱里は大切なお姉ちゃんなのっ」

閻魔はゆっくりと私を見て、唇を引き結んだ。

些かつり上がった切れ長の眼が、真正面から私を捉える。

その時、
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