溺愛ENMA様
言いながら私は、彼女のはだけた着物の合わせ目を手早く整えた。

「あなたは綺麗で素敵だけど、こんなのダメよ。閻魔にだって、お父さんにだって失礼だわ。それに、あなた自身にもね。だって、誰かを愛するのって、その人に愛を働きかけることでしょ?なら、いい加減なのはダメだよ」

蘭は眼を見開いて怒りを顕にし、閻魔は息を飲んで私を見つめていた。

彼女が人以上の存在なら、殺されるかもしれない。

けど、言わずにはいられなかったの。

それはきっと、このどうしようもない気持ちと、閻魔の切な気な顔を見てしまったからだと思う。

グッと見据える私を前に、蘭がゆっくりと口角を上げた。

「……お前、実に命知らずよのぅ……」

その時、閻魔が動いた。
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