溺愛ENMA様
「……蘭、そう怒るな。生き人というのは馬鹿馬鹿しい信念を持つ者が多いらしいからな。真に受けなくていいぜ。それより……蘭」

「閻魔様……?」

たちまち蘭が、怒りを消し去った表情で閻魔を見上げる。

閻魔は素早く蘭の肩を抱いてその髪に唇を寄せると、彼女を連れて部屋の外へと向かった。

「蘭、二人きりで過ごそう。今の俺が何を考えてるか分かるか……?」

「まあ……閻魔様ったら……。蘭は嬉しゅうございます」

同じ階の部屋へと入ったらしく、少し先で襖がピシャリと閉まる音がきこえた。

私は全身の力が一気に抜けるのを感じて、ヘナヘナとしゃがみこんだ。

それから彼女の怒りに満ちた瞳を思い返すと、身体が震えた。
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