溺愛ENMA様
「どうして、私は上手く出来ないの?」

長く意識の戻らなかった朱里が呟くようにそう言ったの。

花瓶に花を活けていた私は、全身がビクリとした。

それから、

「朱里?!」

慌てて朱里に近寄り、彼女の顔を覗き込むと、私は何度か彼女の名前を呼んだ。

「朱里、朱里」

朱里は眼を閉じたままだったけれど、再び話し出した。

「皆は……皆は上手く出来て、あっちに行けてるのに、私はどうしても上手く出来ないの。どうして……?」

全身に、ジットリと嫌な汗が浮かび上がって、ツーッとそれが背中を伝った。

「朱里っ!!」
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