溺愛ENMA様
……彼は夢魔で、普通の人間には見えないけど。

私は仁の手首をつかんで彼の掌を自分の頬に密着させると、首を振った。

「仁は悪くないよ。私がちゃんと分かってなくて、説明が悪かっただけ。こっちこそ、せっかく協力してくれたのに、ごめんね」

私が少し笑うと、仁は赤い瞳に柔らかな光を浮かべて眉を少し下げた。

「それより、身体は復活したか?俺が生気を吸っちまっただろ」

「平気だよ。気にしないで。それよりもう夢に戻って」

「……ああ」

仁は夢魔だから、人の夢の中が住み家だ。

あまり長く現実世界にいると、疲れるらしい。

「またな。ルナ」

「ん」

私は仁が帰っていくのを見届けた後、部屋を出るとバスルームへと向かった。
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