溺愛ENMA様
どう取り繕えばいいのか分からないまま私が焦って亜子ちゃんを見つめると、彼女はわざとらしく眼を細めて不満気に囁いた。

「……ルナ、後で話あるからね」

あ、亜子ちゃん……。

「中西。マネキンみたいに突っ立ってないでさっさと座れ」

ちょっと先生、マネキンより閻魔をどーにか……。

「よう、ルナ」

力なく席についた私の隣に腰を下ろしながら、挨拶を済ませた閻魔がニヤッと笑った。

「何しに来たのよっ!」

女子を中心に、クラスメイトが私達の会話に興味津々だというのに、私は言わずにはいられなかった。

そんな私に、閻魔はまるで動じる事がなかった。

「何考えてんの!?」

「そりゃあお前」

光に透けて、わずかに紫に見えるツンツンの黒髪を両手で撫で付けるように触れ、閻魔は斜めから私を見つめて甘く笑った。

「キスとやらをしに来たに決まってるだろ」

キ、キ、キス!!

目眩がした。
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