溺愛ENMA様
「え?」

たちまち囲み女子たちが首をかしげた。

閻魔はそんな彼女達を前に、昔を懐かしむように遠い眼をして続けた。

「俺がまだガキだった頃だ。確か文禄三年だったか……天下の大盗賊、石川五右衛門の地獄行きが決定してな。まあ、先代の閻魔……父上が言うには初江王(しょごうおう)がかなり強くヤツの地獄行きを押したもんで、石川五右衛門は地獄八種の中でも一番辛い阿鼻地獄行きになったんだ。あの時阿鼻地獄で、悲鳴ひとつ上げなかったアイツを思い出して名字を石川にしてみたんだがどうだ?円真と合ってるだろ」

全員ぽかーん……。

な、なに言ってんの、アホかっ!

ヤバイと思った時には既に遅く、閻魔を囲んで頬を染めていた女子達の動きが止まった。

「じゃあね、みんなバイバイッ!」

焦った私は彼女達をかき分け、閻魔のスクバを肩にかけ、ガシッと彼の腕を掴むと教室を飛び出した。
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