溺愛ENMA様
嫌だ、嫌だ!

私はいつかの朱里との会話を思い返した。

『あのねルナ。私ね、一生懸命勉強して弁護士になるの』

『弁護士?!』

『そう!弁護士になってね、困ってる人を助けたいの』

『凄いね、朱里!私、朱里を応援するよ』

私には将来の夢なんてないから、朱里がやたら眩しかったのを今もはっきり覚えている。

そんな朱里が、人を助けたいって、それが自分の夢だと固い意思をもって話す朱里が死ぬなんて、そんなのダメに決まってるじゃん!!

早く……早く家に帰らなきゃ!

仁と話すときは自分の部屋だけだと決めている。

普通の人には見えない存在と会話するのを、他人に見られる訳にはいかないのだ。

私はすぐさまナースコールを押すと、看護師さんに朱里が事故後初めて言葉を発した事を告げ、丁度戻ってきた朱里の両親と交替して病室を出た。

電車に飛び乗って急いで家に帰ると、私は自室までかけあがり、大きく息をして口を開いた。

「仁!仁!」
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