妖狐の花嫁
×××
薄暗い和室の中で
男が妖しい笑みを浮かべながら
動けない私に…近づいてくる。
「馬鹿だなぁ、華…。
ここから出られると思ったの?」
そう言いながら
私の背後へやってくると
彼は、私の体を背後から優しく抱きしめて
それから…優しく私の顎に手を添える。
「俺から逃げるなんて…考えちゃダメ。」
優しく撫でるように
私の顎や頬をその手で触れると
小さく笑いながら
私の耳元に唇を寄せた。
───その仕草に、背筋がゾクッとする。
「もう華は俺のものだよ?
…絶対に、逃がしたりしない。」
彼はそう囁くと
私の動かない体を引いて、
そのまま畳の上へ───押し倒した。
金色の目を愉快そうに細めて
じっくりと、私を見下ろす。
「さぁ……どうしよっか?華。」
「っ……。」
「俺に、どうされたい?」
そう言って
彼が私の顔の横に手をつくと
彼の黒い髪が、綺麗に落ちてくる。
まさか こんなことになるなんて…っ。
こうなった理由は
今から数時間前に遡る──────。
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