妖狐の花嫁
静かな思惑
(………あ、れ…?)
浮上してくる意識に
私はゆっくりと 目を覚ました。
目を開けると、そこは知らない部屋の中で
私はそこに1人横になって 寝ていた。
まだボーッとする意識の中で
静かに周りを見渡すと
そこは、小さな和室の部屋。
何故 畳の上で寝ていたんだろうと
1人記憶を巡らせていると
不意に───背後から声がする。
「──あぁ、起きたんだね華。」
「!!」
バッ---と勢いよく後ろを向いて
その人物を見ると
私は目を見開いて
一気に状況を思い出した。
(そうだ私……黒田くんと話してる途中で気を失って…っ。)
意識を飛ばす直後に見た
信じられない彼の姿がまた目の前に見えて
私は本当に現実なんだと 思い知らされる。
そんな私の様子を見ながら
クスクスと笑う黒田くん。
その時感じた
彼のわずかな『狂気』に
私は怯えながら
少しずつ、距離を取っていく。
「やだなぁ、そんな顔しないで華。」
「ぁ……嫌…っ。」
「大丈夫。
…怖いことは何にもないよ。」
そう言いながら近づいてくる彼に
私は後ずさるも、
小さな空間では 限界がある。
背中が壁に当たった瞬間
私は目の前までやってきた彼を見上げて
ドクンッ---と、心臓が鳴った。
……何、今の…っ
体が…上手く動かない……!
「それはね、華。
華の魂が俺と共鳴してるからだよ。」
「…共、鳴……?」
逃げることのできない私の前で
彼は静かにしゃがみ込むと
私の顔を覗き込みながら
妖しく口角を上げた。
「そう…。
俺が華と会った日---お前を見初めた日から
華はもう俺のものなんだよ。」