妖狐の花嫁
ピピピピピピ…!ガチャッ!
すぐ側から目覚ましの音が聞こえて
片手でそれを止めてから、体を起こす。
目をこすりながら
「ん〜…!」と伸びをすると
少しだけ眠気が覚めた。
(…何か…すごく懐かしい夢見たなぁ…。)
私はベッドから降りて
洗面所へ向かうまでにそんなことを思う。
もう自分がその時何歳だったか
分からないくらい前の出来事──。
相手の顔もよく覚えてないし、
名前も何だったか 今はもう思い出せない。
ただ1つ確信して覚えてるのは
夢に出てきた神社が、
家の近くにある『あの神社』であること。
私は歯を磨きながら
また眠そうな意識を
必死に起こそうと、目を大きく開けた。