妖狐の花嫁
止まる覚醒
(………ん……何…?)
眠りから
意識が浮上してきて
私は体に変な違和感を感じる。
重い…というか
何かに締められてる感覚…
───何だろう、これ。
「…ん……。」
「……起きた?華。」
「!!」
耳元に聞こえた声に驚いて
ハッと、目を覚ますと
体の違和感の正体を 認識する。
体に回された腕と
背中に感じる体温───。
間違いなく、彼の仕業だった。
「っ……な、何して…。」
「んー?何って、一緒に寝てるだけ。」
「だ、だから何で一緒に寝て…。」
思わず身を固まらせる私に
彼はクスクスと笑いながら
更に体を密着させてきて
彼の黒い髪が こちらに少しかかる。
それと同じくして
耳元に 吐息がかかった。
「っ…!」
「華、緊張してるの?
心臓すごいドキドキ言ってるけど?」
そう尋ねてくる彼の声色は
間違いなく確信犯だ。
口角を上げながら言っているのが
私にもわかる。
(こんな状況で緊張しないわけないし…。)
なんて考えていれば
後ろの彼はまた小さく笑い声を漏らして
私の髪を梳き始めた。
「ふーん、やっぱり図星なんだ?
心の声聞こえちゃったよ。」
「…あ……。」
───そうだった。
彼は 人の考えが読める能力を持っているんだった。
私はそんなことをすっかり忘れて
本音を漏らしてしまった。
彼はそんな私にまたクスクス笑いながら
「可愛い。」と囁く。
「…そ、そろそろ起きようよ…。」
「えー?起きちゃうの?
今から悪戯しようと思ってたのに。」
「っ、起きる、起きます…!」
"悪戯"と言いながら
私の着物に手を掛けようとしてきた
彼の行動を見て
私は即座に体を起き上がらせて
側から離れた。
私の慌てぶりに
彼はまた小さく笑っている。
「それじゃあ、朝ご飯を食べに行こうか。」
「……うん。」
彼がそう言って
私の布団から出ると、
私の手を優しくとって
一緒に部屋を出た。