妖狐の花嫁
───…な……を…て…
─────…な、目を…して…
(………?何…?)
───華、目を…して。
───華、目を覚まして。
「華、目を覚まして!」
「っ!!」
───バッ!、と
その声を認識して
私は思わず飛び起きる。
叫ぶような
焦った声が側で聞こえて
すぐにそっちを振り向けば、
彼が少し息を切らしながら
こちらを見ていた。
「あ………吟…。」
「…っ、華…。」
───ギュッ、と
名前を呼ぶと きつく抱きしめられた。
今までの彼の様子とは違って
どこか余裕のない態度に
私は少々驚く。
(………そうだ、私意識が飛んで…。)
それで、ここで倒れるように寝ちゃってたんだ。
私はそう思い出して、
側の彼に 声をかける。
…あれからどのくらい経ったのだろう。
誰かと会いに部屋を出ていた吟が
こうして戻っているということは
少し長い時間経ってしまったのだろうか。
「もう、話は終わったの?」
「…うん。終わったよ。
それより華は?体平気なの?」
「え?…うん、大丈夫だよ。」
吟は私を抱きしめながら
私にそう尋ね返して
私はそれに 軽く返事を返す。
体は何ともなく
以前と何ら変わらない状態だ。
……いや、むしろ いつもよりも少し楽かもしれない。
「部屋に戻ったら倒れてるから驚いた…。本当にすごく焦ったよ。」
「……ごめん。」
「いや、華は何も悪くない。」
体調悪いのに気づいてあげられなくて
ごめんね、と
吟が弱々しい声で
私に謝る。
抱きついているから
彼の表情は分からないけれど、
声を聞く限り
相当心配してくれていたんだろうと思う。
(いつもは何があっても強気で余裕そうなのに……変な感じ。)