妖狐の花嫁
「まさか、抱かれたりしてないよね?」
「抱っ-----?!」
「体、痛かったりとかしない?」
いいから答えて、と
冷めた視線で射抜かれて
私はビクッ、と肩を揺らしながら
首を横に振る。
…体は 痛いどころか、以前より軽い。
私の反応に
吟は薄く笑みを浮かべて
もう片方の手で 私の頬を撫でた。
「大丈夫みたいだね。
もし他の奴に体許したりしたら…分かってるよね?」
「っ……そ、そんなことしないよ…。」
「なら良かった。
……でも一応、付けとこうかな。」
吟はそう言うと
私の顎から手を離して
密着していた体を 少しだけ離す。
(付けとこうかなって…一体何を……
──────っ!?)
そう疑問を抱いていたのも束の間
突然、着物の襟を強く開かれ
首元に向かって 吟が顔を近づけた。
そして───
「っ……!」
───首筋に 小さな痛みが走る。
何度かその痛みが続いて起こり、
私は顔を薄っすら歪めながら
その痛みに耐えた。
そして暫くすると
満足気に吟が顔を上げて
うっとりと……私の首筋を眺める。
その時の
唇を舐める吟の姿が
妙に───官能的で。
「綺麗に付いた…。
着物でも、幾つか見えちゃうね。」
そして
そう呟きながら
妖しい笑みを浮かべて
自分が先ほどまで触れていたそこに
指を伝わせる。
───それは 彼の所有印だった。
「もう、誰にも触らせちゃだめだよ。
───分かった?華。」
「……うん。」
私がそう返事をすると
吟は甘く微笑んで
優しく───私を抱きしめた。