妖狐の花嫁
「そして恐らく、吟は俺のかけた術に
少なくとも何となくは気づいている。」
「っ、何だと……?」
「奴はあの名高い黒狐だ。並外れて感知力が高い。
…だが、それも想定の内。」
真はそう言うと
伏せていた瞼を上げて
真っ直ぐに俺の方に視線を投げた。
そして
また淡々と語り始める。
「きっと奴はそれに気がついて
あの娘を城に留めた後、城外に結界を張ったと見える。」
「……結界…。」
「そのせいで あの娘の情報が一切遮断されたんだろう。」
吟がやりそうなことだ───。
真は嘲笑うかのようにそう呟くと
妖しく笑みを深めて
障子の方へと視線を向けた。
「結界が張られているんじゃ
俺らは中に入れないんじゃないのか。」
「……それが、そうでもない。」
「!」
俺の言葉に
真は再び目を伏せると
障子の方へ手を伸ばして
人差し指をそこに向け クイッと動かした。
すると
スパンッ、と障子が開かれる。
そして───
「───!お前ら……。」
障子の向こうに
奴らが立っていた。